TL;DR(結論)
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ハイフン(-)は別物。つづりや語を結ぶ記号で、ダッシュではありません。
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エンダッシュ(–)は範囲・対比:「1999–2001」「Tokyo–Osaka line」。
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エムダッシュ(—)は“情報の追加・補足・言い換え”。コロン(:)に近いが、語気が強く、話し言葉寄り。
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和訳では 無理に「つまり」へ固定せず、「付け足し」「同格」「具体化」「言い換え」かを見極める。訳さず処理するのも有効。
0. 用語整理(まずはここから)
記号 | 名称 | 用途の中核 | 例 |
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– | ハイフン(hyphen) | 語を結ぶ・複合語 | well-known, two-year-old, e-mail |
– | エンダッシュ(en dash) | 範囲・対置 | May 1–3, pp. 15–19, Tokyo–Osaka flight |
— | エムダッシュ(em dash) | 追加・補足・言い換え(語気強) | He kept his promise—at last. |
補足:日本語入力では見た目が似た 全角ダッシュ(―, U+2015) が出ることがあります。英語の組版では em dash(–, U+2014)を使うのが原則。サイト内も em dash に統一します。
1. エムダッシュ(—)の“効き方”
エムダッシュは 前部の内容に情報を追加 するのが基本。次のどれかに当てはまることが多いです。
1) 挿入・同格(挟み込み/両端に—)
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My favorite author—Jane Austen—wrote many great novels.
訳:私の好きな作家、ジェーン・オースティンは多くの名作を書いた。 -
She went to the store—which was closed—and came straight home.
訳:彼女は店に行ったが閉まっていたため、そのまま帰宅した。
コツ:ダッシュ×ダッシュで挟まれた部分=補足。外しても主文は成立するかを確認。
2) 情報の追加・言い換え(後置)
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He didn’t just win the race—he shattered the world record.
訳:彼は優勝しただけではない。世界記録まで塗り替えた。 -
The project is important—crucial to the company’s future.
訳:その計画は重要だ——会社の将来にとって極めて重要だ。
コツ:「A—B」なら B が A を具体化/強調。必ずしも「つまり」ではない。
3) 後置修飾・後添え(名詞や文への“あと一言”)
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The movie was interesting—a surprise twist at the end.
訳:その映画はおもしろかった——ラストのどんでん返しが効いていた。 -
She closed her eyes and took a deep breath—trying to calm her nerves.
訳:彼女は目を閉じて深呼吸した——気持ちを落ち着けようとして。
注意:フォーマル作文では カンマやコロンで十分な場合が多い。ダッシュは語気が強い分、多用しない。
4) 転換・対比(話の切り替え)
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We planned everything—then the storm hit.
訳:すべて計画どおり——そこへ嵐が来た。 -
The party was fun—too short, though.
訳:パーティーは楽しかった——ただ、早すぎた。
「— but …」のように ダッシュ+等位接続詞は強すぎ・冗長になりがち。通常はカンマが自然。
2. コロン(:)との違い
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コロン:前部の要点→具体化/列挙。やや堅い。
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エムダッシュ:語気強めの追加・言い換え。話し言葉寄り。
同じ関係でも “コロン=整然/エムダッシュ=勢い(強めの区切り)” といったニュアンスの違いがある。
3. 訳し方の指針(受験向け)
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訳さない:日本語の語順で自然に吸収(最頻)
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補う:指示語や抽象語を 具体化 して訳す
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言い換える:直前の語句を 別表現 に置き換える
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一文分割:語気が強い場合は 二文に割る
例:He kept his promise—at last. → 「彼はようやく約束を守った。」(“at last” を強調)
4. エンダッシュ(–)の使いどころ
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範囲:May 1–3, pp. 15–19
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対置(均衡する語の結合):the Tokyo–Osaka line, a mother–child relationship
ここで ハイフン(-)を使わない のが重要。Tokyo-Osaka は不可。
5. ハイフン(-)は「つなぐ」記号
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複合形容詞:a two-year-old boy, a well-known scholar
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語の切り離し防止:non‑breaking hyphen(語中改行を防ぐ)
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注意:範囲表現には使わない(× May 1-3 → 〇 May 1–3)
6. よくある誤り・落とし穴
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記号の取り違え:—(em)と –(en)と -(hyphen)を混同。
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“— but …” の多用:冗長になりがち。まずは カンマを検討。
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ダッシュ乱用:フォーマル作文では控えめに(読解で理解できればOK)。
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全角ダッシュ(―)の混在:英語文中では em dash(—)に統一。
7. ミニ演習(すぐ解ける)
各文の ダッシュの機能 を [A]挿入・同格/[B]追加・言い換え/[C]後置修飾/[D]転換 から選んでください。下に解答あり。
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The committee reached a decision—unanimously.
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My mentor—an Oxford linguist—changed my career path.
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We were ready to launch—then the servers went down.
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The solution is simple—use an en dash for ranges.
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He apologized—sincerely this time.
解答:1)[C] 2)[A] 3)[D] 4)[B] 5)[C]
8. スタイル注記(運用ルール)
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当サイトでは em dash(—)は前後スペースなし で統一(Chicago Manual 準拠)。
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範囲表現は en dash(–)。英数字環境で統一し、全角混在は避ける。
9. まとめ
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ハイフン=語を結ぶ/エンダッシュ=範囲・対置/エムダッシュ=追加・言い換え。
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読解では エムダッシュの後ろが“核となる追記” になりやすい。まず 何が足されているか を見る。
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訳は 固定せず柔軟に(無訳/具体化/言い換え/二文化)。
「ダッシュ=情報追加」 と覚えると読解が速くなるわ。“つまり”固定は危険。直前を 具体化 しているか、言い換え なのかを判定しましょう。

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